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ピタッと立ち止まった大神は、そこはかとなく声を弾ませた。
しかも再び歩き始めた時には、やけにゆっくり、燈子の足に合わせてくれる。
“やっぱりそうか。分かるヤツには分かってしまうか…”
何やら嬉しそうにブツブツ呟いている彼の後に従いながら燈子はこっそり苦笑いした。
_近頃、この人を掌握し始めた自分が怖い_
「そう言えば赤野。
昼からのプレゼンのデータのことなんだが…」
「ああ、それでしたらここに…あれ?」
「3ページ目の差し替えを頼みたいんだ。すぐに出来るか。
ん?どうした、赤野」
大神が、にこやかに振り返った。
「あれ?あれあれ?…確かにここのポケットに…………ない」
燈子の顔から、血の気が引いた。
「どうしよ課長……落っことしちゃった」
「な…んだ…と」
大神の笑顔が凍りついた。
「落としちゃいましたぁっ!
社長室にぃ!!」
「ばっかやろおぉぉっ!!!!」
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