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(か、課長ぉ。狭いっ)
(しっ、静かに…社長だ。入ってくるぞ)
とっさに隠れた幅90センチのクロゼットは、2人がやっと入れるサイズ。
燈子は、大神課長に後ろから抱き抱えられる姿勢で密着している。
(赤野、どうなってる?)
課長に後ろから尋ねられ、燈子は空気孔の隙間から、外の様子を窺うが…
耳がくすぐったい。
元来、大神の無駄にセクシーな声に弱い彼女は、プルッと身体を震わせた。
(えっと…社長と…あ、あともう一人入ってきますね…
あ~、あれはエントランスの華、原口さん!)
(うっわ、まずいな)
(何が?)
(イヤ…別に)
やがて二人は、部屋のソファ辺りで立ち止まった。外から会話が聞こえてくる。
「全く……
君は困った子だね。役員会の最中に私を呼び出すだなんて」
「だって社長。昨日もその前もキャンセルだなんて…寂しくって…ミユ、ヒトシ君が他の誰かと逢ってるんじゃないかって…心配で」
「はっはっは。
___言っただろう?急な出張だって。今の私には君が全てだよ…疑っているのかい?」
「う、ううんっ…バカバカ、ミユのバカ!
ゴメンなさい。ワガママな私を赦して」
「イヤ、丁度良かったよ。
私だって、私だって君と逢いたかったんだ、原口くん」
「社長、いえ、ヒトシ君~~っ」
「やれやれ……参ったな………ん」
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