宗教彼女

第1章 黒部 洋平

「人間は見た目が150パーセント」

黒部洋平は呟いた。
ふうと薄く長い吐息が漏れ、跳ね返った空気が宙に舞っては自嘲気味に薄笑いを浮かべる洋平の鼻先を掠める。

目の前には決してめくられることのない（洋平にとって）作者不詳の英米文学小説。

もう何日めだろう、夏休みに大学の図書館に来たのは。

他に行くところなんてないのだ。