第1章 黒部 洋平

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窓枠のサッシには、朧げながらひとの顔とおぼしき物体が写っている。 まじまじと眺めながら、やはり洋平は思うのである。 青白くカサカサと粉吹く地肌。 ごつごつと角ばった頬ボネ。 耳は生意気にも天に向かって反抗的に鋭く反り上がり、離れた目は極端なカーヴをマイナス方向に弧を描き、それでいて糸のように細い。 鼻は決して低くはないが、だらりと垂れ下がった鉤鼻が底意地の悪い性格を象徴しているようだ。 口元はだらしなく少し半開きとなっており、無様な歯並びが覗く。 あぁ! 醜い!!汚らしい!!! まるで、忌々しき千年の呪いにかけられた悪魔のごとく僕は僕であることに絶望する。
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