第1章 黒部 洋平

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醜いことは罪だ。 はっきりとそう思える。 美しさの反対に醜さがあるとすれば、やはり光に相対するのは影であり闇なのだ。 心の底から湧き上がってくるどす黒い感情は、洋平の心の臓を激しく脈打ち、川を逆流する濁流よろしく呼吸を妨げる。 苦しい。息苦しい。 そうなのだ。 醜いことは、苦しみの感情以外に何があろう。 洋平は幾千万回と味わった苦々しい唾を荒く飲み砕くと、窓枠のサッシから目を逸らして外を眺めた。
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