またとない景色

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一瞬だった。 窓の中の「それ」は、同じく窓の中に存在している僕の首に手をかけた。 首を絞めているのだろうか。 僕は実際には触れられてもいない首を軽く抑えた。 触られているような形跡も、感触もない。 しかし、窓の「ソレ」はまだ、僕の首に手をかけている。 絞め続けるのかと思いきや、前触れなくすっと手を離した。 窓の中の僕の首には、鎖につながれた首輪がはめられていた。 鎖の先は「ソレ」が持っている。 実際にはそんなものはない。僕は誰にも縛られてはいない。 元来、何かに束縛されるようなことを嫌うのだ。 そんな矢先、目的の駅に着いた。 今日も残業が確定的だ。 背中のリュックの中に眠る、溜まりに溜まった書類がそれを物語る。 僕は束縛されるのは嫌いだ。
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