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「彼らからお聞きしたのですが、あなたがギルボア・アーネットさんですか?」
少女は突っ伏している男の横に立ち尋ねた。
近くで男を見ると酒の匂いを漂わせ、よれよれの薄汚れた服を着ており、髪も髭も伸ばしきった様子だ。実際に少女は見たことはないのだが、それはまるでスラム街にいる浮浪者のような風貌をしている。
「ん…。んん。んぐ…。…だれか俺の名を呼んだか…?」
突っ伏していた男、ギルボアは少女の呼びかけにより目を覚ました。
「おまえさんが、呼んだのか?何の用だこんな浮浪者に…」
ギルボアは自嘲しながら少女に尋ねる。
「はい、私があなたの名前を呼びました。…ギルボアさんあなたのお力をぜひお借りしたいのです」
ギルボアは握りしめていた酒瓶の口を加え中の酒を一口のみ、
「おまえさん、その声質からすると、まだ子どもだな?ガキが酒場にきてもいいことはない。さっさと帰るんだな」
と答えた。
「はっ、ガキが酒場にいる日がくるたぁこの国は本当におしまいだな」
豪快に笑いながらそうも答えた。
「でたよ、きちがいギルボアのたわごとが…」
「この国が終わるわけないだろ、馬鹿ギルボア。いまだって順調に国も俺らの財布の中も潤ってら」
周りの席から嘲笑とともにそんな声が聞こえる。
「けっ、なにもわかってない馬鹿どもめ。本当に終わるんだよこの国は、もう何をしても手遅れだ」
ギルボアは小さく愚痴をこぼしながら、酒をまた飲み始める。
「いいえ、ギルボアさん。まだ手遅れじゃありません。あなたがお力をお貸ししていただけたなら、まだ終わりません。」
少女がそうギルボアを説得し始めた。
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