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電話をかけてから、数十分後。
ようやく車は、彼女のマンションへ到着した。
来客用の駐車スペースに車を止めて、自分のキーケースに既に馴染んでいる莉菜の家の鍵を使ってオートロックを抜ける。
そしてエレベーターで上まで上がり、莉菜の家の扉をゆっくりと音を立てないように開けた。
豪が一度寝たらなかなか起きないタイプなのは当然知っているけど、念のため。
今、豪が起きたら、莉菜が困るだろうから。
寝ている豪を起こさないようにゆっくり扉を閉めて、廊下を通って莉菜の部屋の扉をノックくる。
「誰……?」
扉を開けた瞬間、暗い部屋がサイドテーブルのライトの明かりでぼんやりと明るくなる。
「え、類……?」
莉菜は、心底驚いた表情で俺を見つめていた。
その顔は、見るからに具合が悪そうだった。
やっぱり、冷えピタとか買ってきて良かった。
「お見舞い。やっぱ来て良かった。絶対熱出してると思ったんだよね」
「どうして……?」
「莉菜、昔から風邪ひいたらすぐ熱出してたじゃん」
しかも、相当な高熱。
子供の頃から、莉菜が熱で寝込んでいる姿を度々目にした事があったから、今回もきっと熱を出していると思っていた。
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