抱いてきた敵対心

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強引に熱を測らせると、案の定38度6分もあった。 やっぱり。 「おでこ、出して。冷えピタ貼るよ」 「……なんか類、お母さんみたい」 「それ、1番嬉しくないんだけど」 弟みたいって言われるのも嫌だし、お父さんみたいって言われるのだってもちろん嫌だ。 でも、お母さんみたいって。 最大級に、言われたくない言葉。 なのに、俺が嫌そうな顔をしていると莉菜はめちゃくちゃ嬉しそうに笑う。 「……来てくれてありがとう」 好きな人からの、『ありがとう』は、結構胸にくる。 しかも、俺の好きな笑顔付きだ。 「お礼言われるような事じゃないし。もちろん心配だから来たけど、下心がないとは言えないしね」 むしろ、心配半分、下心半分。 いや、もしかしたら、下心は半分以上かもしれない。 「弱ってるときに優しくされたら、少しは俺にドキッとしてくれんじゃないかなと思って」 もう、状況なんかどうだっていい。 狡くたっていい。 莉菜が一瞬でも、俺を意識してくれるなら。
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