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電話を切って彼女の声が聞こえなくなった瞬間、急に空虚感が胸に押し寄せてくる。
大体の事は何だって器用にこなせる自分だけど、莉菜に関してはどうしてこんなにも自信が持てないんだろう。
『莉菜は俺を好きになるよ。絶対に』
彼女が失恋して泣いていた夜に、俺が彼女に投げかけた言葉。
だけどその自信があったからあんな事を言ったわけじゃない。
むしろあの言葉は、自信のなさの表れだ。
莉菜は確実に、俺を好きになりかけているはずなのに。
それでも実際、彼女の口から『好き』を聞くまでは、油断なんて絶対に出来ない。
頼むから、今更あの人に心を奪われないでほしい。
「やっぱすげー心配……」
いっその事、自分もどうにかして莉菜とあの人が話し合う場に参加出来ないだろうかと本気で考えてしまう。
もちろん、本当にそこまでするつもりはないけれど。
俺は余裕のない溜め息をつきながら、目を閉じた。
莉菜が俺を好きだと言ってくれる日が必ず来ると願いながら。
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