212人が本棚に入れています
本棚に追加
昨日残業しなかったのには理由がある。
未来が莉菜に接触しないか気になったから。
二日前話し合ったときの未来の様子が、気がかりだった。
あのとき帰り際、俺に冷たい笑みを見せた彼女。
俺と話をしても無駄だと思った未来は、必ず莉菜に接触してくるはずだ。
だから昨日、残業せずに莉菜の様子をこっそり窺いに行ってみたけど、莉菜の前に未来が現れる事はなかった。
「すみません、何か変な事言っちゃって……いきなりプライベートの事聞かれたって気持ち悪いですよね」
「いや、気持ち悪いとはさすがに思ってないですけど」
それよりも、昨日バレないように莉菜が無事に家に着くまで尾行していた俺の方がよっぽど気持ち悪いだろうな。
「椿さん、最近彼女と別れたって噂で聞いたんですけど、それ本当なんですか……?」
「本当ですよ」
「え、じゃあ……」
「でも既に夢中な女性がいるんですよね。もうその人の事で、頭が一杯で」
俺のその発言を聞いて、青木さんは明らかに動揺した表情を見せた。
好きでもない女に好意を持たれる事程、面倒な事はない。
最初のコメントを投稿しよう!