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当然歩く音だけで莉菜だなんてわからない未来が莉菜が帰ってきた事に気が付いたのは、俺よりだいぶ後だった。
莉菜も何か考え事をしているのか、ぼんやりとした表情でマンションの方へ向かってくる。
思っていたよりは、帰ってくるのが早かった。
けど、その表情から全てを読み取る事は出来なかった。
そして莉菜がマンションのエントランスへ足を踏み入れた瞬間。
後ろから、ずっと待ち構えていた未来が声をかけた。
「莉菜さん、お帰りなさい」
「未来ちゃん……」
莉菜は未来がここにいるなんて思っていなかったからか、明らかに戸惑いの表情を見せていた。
「ちょっと莉菜さんと話がしたくて、待ってたんです。ごめんなさい待ち伏せなんかして」
「あ……ううん、大丈夫だけど……」
「外ではちょっと話しづらいんで、莉菜さんの部屋に上がってもいいですか?」
二人の会話が、微かだけれどハッキリと聞こえてくる距離。
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