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部屋の掃除をしていないから、と家に入れるのを断った莉菜に対して、未来は頭を下げた。
そして、俺を譲ってほしい、と莉菜に言った。
譲る譲らないなんておかしいと諭す莉菜。
そんな二人の会話を聞いて、胸の奥がまたズキズキと痛む。
でも俺が感じる痛みなんて、どうって事ない。
俺が別れようと言った瞬間から感じている、未来の胸の痛みに比べれば。
そして俺がアプローチする事によって、莉菜も未来の事を想って胸を痛めている事を俺は知っている。
莉菜に諭されて、ついに未来はここがマンションのエントランスだという事も構わずに泣き出してしまった。
マンションの前を通り過ぎる人は当然気になって二人に視線を注ぐ。
どこか違う所で話をしようという莉菜の言葉を無視して、未来は一層声に出して泣き始めた。
「部屋汚いけど、家上がって。多分豪はまだ帰って来ないと思うから」
未来は、莉菜のこの言葉を待っていた。
そして、俺も。
「待って。俺も行くから」
莉菜も未来も、何故俺がここにいるのかといった表情で俺を見つめた。
莉菜よりも未来の方が、驚きは強かったかもしれない。
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