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「類、どうして……?」
「とりあえず、上で話そう」
そして俺は莉菜よりも先にエントランスに入って、莉菜の家の鍵が付いたキーケースを取り出してオートロックを抜けた。
当然未来は、俺が莉菜の家の鍵を持っている事に気付いて不満そうな表情で俺の行動を見つめていた。
家に入り、俺と未来はソファーに座った。
莉菜はキッチンに、コーヒーを淹れに行く。
話を切り出そうとした瞬間、口を開いたのは未来の方が早かった。
「どうして類までここにいたの?」
「未来なら、絶対莉菜に会いに行くと思ったから」
「それどういう意味?」
「未来が本当は納得してない事も、莉菜に逆恨みしてる事もわかってたし。だから、莉菜のとこ絶対行くだろうなって。……お前の行動パターンなんて、すぐに読めるんだよ」
「だって私、類がプロポーズしてくれるのずっと待ってたんだよ。なのに、どうしていきなり出てきたあの人に類を奪われなきゃいけないの?あの人さえいなかったら、私達はいつか結婚してたはずなのに」
未来の立場からすれば、言っている事は当然間違っていないだろう。
誰だって、そう思う。
莉菜さえいなければ。
俺と未来は結婚していた。
だけどもしも結婚していたとして、その結婚生活が幸せかといえば、きっと幸せなんかじゃない。
偽りの人生がまたスタートしていただけだ。
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