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早めにシャワーを終わらせて、浴室を出るとバスタオルとスウェットが雑な感じで用意されていた。
スウェットは明らかに豪のもので、しかも年季が入っているのかだらしなく伸びきっている。
もっとマシなやつが良かったな。
なんて思いながら、濡れた髪をバスタオルで拭いてリビングへ戻ると、二人の姿はどこにもなかった。
コーヒーカップは床に落ちていて、コーヒーも床に零れたままの状態。
未来のバッグはどこにもなくて、玄関の扉を確認すると鍵は開いたまま。
未来が怒って出て行ったところを、莉菜がわざわざ追いかけたのか。
別に追いかけなくていいのに。
追いかけて、何を話すというんだろう。
俺がやった事は、未来の心を深く傷つけた事に変わりはない。
だけど俺は、こうするしかなかった。
中途半端な優しさは、今以上に彼女を傷つけるだけだから。
「……」
俺はバスタオルで髪を拭きながら、携帯で電話帳を開いて、電話をかけた。
「もしもーし」
「あ、豪?俺だけど。今、どこにいる?」
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