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未来は俺を振り切るように、駅までの道を歩き出した。
当然俺もここまで来たからにはあっさり引き返すつもりなんてなく、彼女の背中を追いかける。
「私、別れ話ならしないって言わなかった?」
「ずっとこのままでいいわけないだろ」
「だったら類が私の所に戻ってきてよ。今なら一瞬の気の迷いだったんだって、許してあげるから。……だから、戻ってきて」
立ち止まり、俺を見つめる眼差し。
その眼差しには、彼女の強い意志が感じられた。
「戻るつもりはないよ」
「まだそんな事言ってるの?本当にどうしたの?」
「頼むから、ちゃんと話聞いて欲しい。……俺も未来が俺に言いたい事、全部聞くから」
「……」
未来はしばらく俺を見つめて立ち止まった後、溜め息混じりに口を開いた。
「じゃあ、家に来て」
「……」
「会社の近くでこういう話するの、嫌だから。私の家で話そ?」
「……わかった」
そしてそのまま俺達は、ほぼ無言のまま未来の家まで向かった。
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