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「類、上がって。コーヒーでいい?それともお酒にする?類の好きなメーカーのビール、冷えてるけど」
「いや、コーヒーでいいよ」
久し振りに足を踏み入れた未来の部屋。
几帳面な未来らしく、一つ一つの物がどこから見ても綺麗なくらいに整頓されている。
ホコリ一つさえ落ちていないんじゃないかというくらいの綺麗な空間が、付き合い始めた頃から何となく落ち着かないと感じていた。
そして、改めて久し振りにこの部屋に入ると、以前よりも落ち着かない自分がいた。
「はい、コーヒー。ブラックでいいよね」
「ありがと。……このコーヒー……」
未来が淹れてくれたコーヒーに口をつけて、すぐ気が付いた事。
このコーヒーは昔から俺が好んで飲んでいるメーカーのものだった。
「気付いた?類がいつも飲んでたやつだよ。類とよく一緒に飲んでたら私も好きになっちゃって、自分でもちょこちょこストックしてるの」
「あのさ、未来……」
「あ、類ももし良かったら帰るときコーヒーの粉持って行く?沢山あるから遠慮しなくても……」
「その爪、莉菜にやってもらったの?」
今日、未来に会った瞬間からその両手の爪が目に入っていた。
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