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お遍路さん
その日、岩倉(仮名)は朝から調子が悪かった。
しかし運悪く、今日から剣道部の強化合宿が始まる。
岩倉の所属する剣道部は、優秀成績をたくさん残している。たくさんの優秀成績を残しているという事は、練習はもちろん、上下関係も厳しいという事。
強豪校で部活動の合宿を一年生が休むなど許されない。たとえ監督やコーチが許しても、先輩たちが許してくれない。
岩倉は体に重みを感じながらも、合宿所へと向かった。
合宿所までの道のりを歩いていると、気配を感じた。振り向くと後方から歩いて来る人物がいる。
真っ白な服を身に纏い、日笠を被り、木の杖を持っている。それは四国で御参りをするお遍路さんの姿だった。
岩倉は一瞬でその人物がこの世のものではないと分かったそうだ。合宿所までの道のりを慌てて進むが、何度道を折れてもお遍路さんの杖の先の金輪が定期的にシャンと鳴る。
……付いて来ている……?
そう考えざる得ない距離感で、お遍路さんは後ろを歩く。どうする事も出来ない気味の悪さを抱きつつ、岩倉は合宿所に着いた。
合宿所の敷地内に入って振り向くと、お遍路さんは消えていた。ホッと一安心もつかの間、ここからは怖い先輩と厳しい練習が待っている。
岩倉は気を取り直し、道場へと向かった。
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