恋人宣言-2

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まるでこの1週間、俺を避けていた事実なんてなかったかのようなこの態度。 「何だよ、食わねーの?せっかく買ってきたのに。お前、辛いの好きじゃなかったっけ」 「いや、好きだけどさ」 あまりに普通過ぎる豪に拍子抜けした俺は、とりあえず少しスペースを空けて豪の隣に座った。 「ほら、ビール」 「どうも」 「はい、乾杯」 何の乾杯なのかもよくわからないまま、ビールの缶をゴツンと合わせて、二人でソファーに並んで無言でビールを飲む。 「……」 テレビのバラエティ番組の音だけが響き渡る空間の中、俺は先に口を開いた。 「……あのさ」 「お前さ、何で姉ちゃんがいいの?」 「え……」 豪は目の前のテレビに視線を向けたまま、俺に問いかけた。 「姉ちゃんより良い女なんか、いくらでもいるじゃん。わざわざ姉ちゃんじゃなくたっていいだろ」 「……莉菜より良い女なんかいないよ」 それだけは昔から、わかっている事。
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