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豪は言いづらそうな表情を浮かべながら、またテーブルに置いていたビールの缶を持ち上げ一気に飲み干した。
そして数秒後、やっと重たく口を開いた。
「ガキの頃から、誰にも言ってこなかったのかよ」
「何を?」
「だから、お前が姉ちゃんを好きだって事だよ。ガキの頃からずっと、好きだったんだろ?」
誰にも言う事はなかった。
誰かに言ったって、どうしようもない願いだと思っていたから。
だから豪にも当然言わなかった。
莉菜本人でさえ、俺の想いを知ったときは驚きを隠せない様子だったし。
「そうだね。誰にも言わなかったかな。言ったって、何かが変わるわけじゃないと思ってたし」
「だから、それが腹立つんだよ。言っておくけどな、俺は今の今まで、お前にだけは何でも相談してきたんだぞ」
確かに子供の頃から、大人になってからも。
豪は会う度どんな事でも俺に話してくれていた。
おかげで豪の恋の相手なら、幼稚園の頃から今の彼女まで多分全て把握している自信はある。
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