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「俺にとってお前は家族みたいなもんなんだよ。だから、お前にとっても俺と姉ちゃんは……」
「豪の事は、兄弟みたいに思ってきたよ今までずっと。でも俺は、莉菜を豪と同じ括りで見たことは一度もない」
生まれたときから、イトコ同士だと決まっていたけれど、そんな現実どうでもよかった。
気が付いたときには、莉菜は俺のイトコでも姉でも家族でもなかった。
ただ1人、俺の心を掴む存在。
彼女だけがずっと、俺の中でただ1人輝き続けている存在。
「ちょっとすみませーん。トイレ行きたいんですけど、ここ通っていいですか?」
軽く酔っ払った女性二人組が、俺達がいた通路に現れて邪魔くさそうに俺達3人に視線を送る。
「あ、すみません、どうぞ」
莉菜がパッと道をあけて、女性達はチラチラと俺達にまだ視線を送りながらトイレへ入っていく。
「ねぇ、ここで話すのは邪魔になっちゃうから場所変えて……」
「つーか、俺今日はこの話もう聞きたくないから。マジ、混乱してるから無理。とりあえず類の顔も姉ちゃんの顔も見たくないわ」
そう言って豪はもう酔いが完全に覚めた様子で俺と莉菜に背を向けた。
「ちょ……待ってよ豪!」
トイレへ向かう豪を莉菜が止めようとしたけれど、俺はそんな莉菜の動きを制止した。
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