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モロッチなんてそんな愛称で、意識している相手の事を呼んだりはしないだろう。
しかも初対面の日に。
「諸橋さん、今回も残念ですね」
「でも諸橋は、椿の彼女の方がお気に入りみたいだよ?」
「……はい?」
「ほら諸橋の顔見てみなよ。莉菜ちゃんの顔見ながら鼻の下のばしてるし」
「……」
実際ゆるゆるに緩んでいる諸橋さんにイラッとして思わず睨みつけると、その様子を見ていた宮本さんがブフッと吹き出して笑った。
「いや~椿からかうの面白いな」
「……からかわないで下さいよ」
もう誰がどう見ても莉菜に夢中で必死な自分。
必死過ぎる分、やっぱり莉菜の事でからかわれるのは良い気はしない。
「それより、椿の彼女、何かあったの?」
「え?」
「何かあったような顔して笑ってるから」
莉菜は席に戻ってから、隣の亜美ちゃんと目の前に座っている諸橋さんと楽しそうに話していた。
ちゃんと、笑っている。
だけど、今莉菜の頭の中ではきっと、さっきの豪とのやり取りだけが鮮明に思い浮かんでいるんだろう。
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