四章

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「山田さんお待たせしました」  改札口付近で待っている俺を見付けた脇坂さんが小走りでこちらに駆け寄ってきた。 「そんな急がなくてもいいよヒールを履いてるんだから転んだら大変だよ」  俺はさりげない優しさをアピールする。  病院に向かう電車内で雑談をしていると脇坂さんから意外な質問をされた。 「そういえば、山田さんの下の名前って何ですか?」 「えっ!?…俺の名前?…進だけど」 「したら今度から進さんって呼びますね…苗字でさん付けだと距離感があるので」  今日の脇坂さんはどことなく何時もよりも積極的な感じの印象を受けたが向こうから仲良くなりたいって思いを無下(むげ)にする訳にもいかないので俺も脇坂さんの名前を尋ねる。 「梨沙(りさ)ですよ…決まったあだ名とかは特に無いので好きに呼んでください」 「う~ん………したらシンプルだけど呼び捨てで梨沙でも大丈夫?」 「はい…大丈夫ですけど異性の方からなかなか呼び捨てで呼ばれることがないのでなんだか少し恥ずかしいですね」  梨沙が好きに呼んでいいと言ったのに呼び捨てだと恥じらうなんて可愛らしいと思っているうちに降りる駅へ着いた。
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