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仕事場である病院に向かう途中で一匹の黒猫が俺たちの前を横切った。
普段であれば気にしないのであるが一連の騒動と今から向かう場所の事を考えると自然と足取りが重くなる。
梨沙も同じ事を考えたのか黒猫を見るまで適度な距離で横を歩いていたのだが横切ってからは俺の左腕をしっかりとホールドして病院に向かった。
嫌な予感というのは当たるものでそれは梨沙が着替えている時に起きた。
「きゃ~~~~?」
「どうした?」
俺は梨沙の叫び声に思わず扉を開けて中を確認すると白い下着姿の梨沙を見て思わず目を反らす。
「それ…その携帯…」
しかし、今の梨沙には下着姿を見られる事よりも自身の携帯に怯えて座り込み体を震わせるだけなので俺は先ず羽織っていた上着を梨沙に掛け問題の携帯を手に取ると中田さんからの通話中の画面になっていたので恐る恐る右耳に充てる。
「うぁぁあう…あっあっあっ…タ…ス…ケ…プープープー」
まるでゾンビの様な呻き声が聞こえた後に小声ながら助けてと言い終える前に電話が切れる。
しかし、すぐさま今度は俺の携帯が鳴り響くので電話相手を確認するとやはり中田さんからの電話だったので恐る恐る電話に出る。
「ア…ラ…イ…バ…ニ…イ…ルプープープー」
今度は呻き声はなかったが小声で洗い場に居るとだけ伝えて電話が切れた。
状況からして中田さんの身に凄い危機が迫っている事がわかり危険かもしれないから梨沙には早くこの病院から出るように言う。
「進さん…ダメ腰が抜けて立てない」
中田さんは一刻も争う状況かもしれないから洗い場から少し離れているこの更衣室に少しの間、一人で残るように伝えるが梨沙は俺の裾を掴み首を横に2回振り嫌とアピールする。
「梨沙…ごめん必ず後で迎えに来るから」
「嫌ぁぁ進さん行かないでぇぇ」
俺は梨沙の手を振り払い梨沙の泣き叫ぶ声が胸に刺さりながらも強引に中田さん救出へと洗い場まで駆ける。
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