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「やっぱ似てないですね。俺、宮本さんのような余裕は持ち合わせてないんで」
別に皮肉っぽく言ったつもりはない。
けど、宮本さんは俺の言葉を聞いてふっと鼻で笑った。
「余裕?俺が?そんな余裕あるように見える?」
「見えますよいつでも。俺、莉菜に対して全く余裕ないんで」
強い男に見られたい。
誰よりも頼りにされたい。
いつでも自信があるように見られたい。
そんな見栄だけは人一倍強いけど、いつだって好きな人にはカッコいいと思われたい。
昔から今までずっと、捨てきれない俺のプライド。
「……俺だって彼女に対しては余裕なんてないんだけどね」
「え……」
「むしろ椿みたいに直でぶつかっていけるストレートさの方が俺は羨ましいけどな。もう今更、そんな事出来ないから俺は」
そう呟いた宮本さんの表情は、どこか切なくて、それ以上聞きたいけど聞けない空気を感じ取ってしまった。
今日、宮本さんの彼女は仕事があるからこの旅行に参加出来ないと言ってたけれど、もしかしたらその裏には何かあるのかもしれない。
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