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「……諸橋、お前もう酔ってるのか」
いつもと変わらない落ち着いた声で話す宮本さん。
「酔ってねぇよ。お前さ、俺が気付いてないとでも思った?」
何の事だかまだ事態を把握しきれていない俺は、とりあえず口は挟まずに2人の会話に黙って耳を傾ける事にした。
「お前、最近茉希ちゃんとうまくいってないんだろ」
「……」
「言わなくてもそれぐらいわかるっつーの。なぁ、椿」
諸橋さんは当然俺も気付いてただろ、みたいな感じで話を振ってきたけれど、当然俺は全く気付いていなかった。
少し何かおかしいと思ったのは、さっき風呂に向かう途中のエレベーターの中。
だけどそれまでは、全くと言っていい程俺は気付きもしなかった。
「いや、俺は全く気付きませんでした」
そう言うと諸橋さんは心底驚いたような顔で俺を見た。
「は?マジで?じゃあ気付いてたの俺だけ?」
「……ですね、多分」
宮本さんはもともとプライベートな事を自分から他人で話すタイプではないから、余計に誰も気付かなかったのかもしれない。
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