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「あ……もしかしてこの子、君の知り合い?」
「彼女です」
俺は即座に莉菜の体を男から離し、自分の背中に背負った。
莉菜は時折苦しそうに顔を歪めるけれど、まだその瞼は閉じたままだ。
「彼女に何もしてないですよね?」
「し、してないよ!むしろ俺達は酔ってカウンターで寝ていた彼女を部屋まで送り届けてあげようとしたんだから……」
相当焦っているのか、彼らは早口で否定して下心がなかった事を強調した。
だけどその言葉が嘘だという事ぐらい、簡単に見抜ける。
この状態の莉菜が自分の部屋のルームナンバーを言えるはずがないし、彼女の名前を呼んだ俺と鉢合わせたときの彼らの表情はかなり動揺した様子だった。
きっとBARのマスターには、自分達の連れだとか嘘をついて、自分達の部屋に強引に連れ込もうとしていたんだろう。
あと一歩遅ければ、取り返しのつかない事になっていた。
「お前ら、莉菜に何しようとした?」
「だから俺達は別に何も……」
と、2人の内の1人が言い返そうとしてきたけれど、もう1人は早く立ち去りたかったのか、「もういいから行こうぜ」と言って止めに入った。
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