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部屋の扉を開けると、部屋にいると思っていた宮本さんと諸橋さんの姿はどこにもなかった。
もしかしたら2人とも、亜美ちゃんから事情を聞いて莉菜を探しに行ってくれたのかもしれない。
「ん……」
そのとき莉菜が苦しそうに言葉にならない声を出した。
俺は彼女の体をゆっくりと背中から降ろし、畳に敷いていた布団の上に優しく寝かせた。
彼女の顔は赤く火照っていて、体は少し汗ばんでいた。
首筋に、汗の水滴が纏わりついている。
「……莉菜」
その首筋に指先で触れると、彼女は眉間に皺を寄せてまた小さく声を漏らした。
「莉菜、ごめん」
俺が不甲斐ないせいで、俺が精神的に未熟なせいで、彼女を傷つけてしまった。
何度謝っても、謝りきれない。
「ごめん……」
そのとき彼女の瞼がゆっくりと開き、うつろな瞳で彼女は俺を見据えた。
そして彼女は、俺の名前を呼んでくれた。
「類……?」
莉菜はまるでスローモーションのような動きで、自分の左手を俺の頬に伸ばし、触れた。
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