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試したつもりなんて、なかった。
ただ、嫉妬する莉菜が見たかっただけ。
けど彼女からすれば、『試された』と思ってしまうのは当然かもしれない。
「……本当に、嫌い?俺の事」
自分の浅はかな行動が莉菜を傷つける事態に繋がってしまったとわかってはいるんだけど。
『嫌い』だなんて言葉、彼女の口から聞きたくなかった。
「……」
莉菜は少しだけ体を起こし、痛む頭を軽く抑えながら唇をかみしめた。
「莉菜、俺は……」
と、その瞬間。
ガチャガチャと扉が開く音が聞こえ、その音と共に遠くから聞こえてきたのは、泣いているのか震えた亜美ちゃんの声だった。
「どうしよう……どこ捜しても莉菜さんいなかった……もし私のせいで何か起きてたら……」
「大丈夫だよ。亜美ちゃんのせいなんかじゃないし、それに莉菜ちゃんの事は絶対椿が助けてるから」
襖越しに聞こえてくる、亜美ちゃんと宮本さんの声。
やっぱり皆で莉菜の事、捜してくれていたんだ。
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