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「……あれ、俺部屋出るとき電気消さなかったっけ」
「え?」
宮本さんは部屋に入るなりそう言い、部屋の中を軽く見回した。
押し入れの戸は、僅かだけど隙間が空いている。
その隙間から宮本さんの様子を窺っていると、押し入れの方へ視線を送った宮本さんと一瞬目が合ったような気がした。
「今、宮本さん、こっち見なかった?目合ったような気がしたんだけど……バレたかな」
莉菜も隙間から2人の様子を窺っていたのか、僅かに聞き取れるぐらいの小さな声でヒソヒソと俺に話しかけてきた。
多分、宮本さんなら気付いただろうな。
「あの、宮本さん、どうかしたんですか?」
「……いや、何でもないよ。それより亜美ちゃん、話って?」
俺と莉菜は、これから解決しなければならない問題があるはずなのに。
さっき莉菜に『嫌い』だと言われた話の続きも、中途半端なところで終わっている。
けどどうやら莉菜の意識は完全に亜美ちゃんと宮本さんの方へ向いているようだった。
俺は正直、他人の告白には興味がないし、そもそも盗み聞きするつもりでこんな所に身を潜めたわけじゃない。
ただ、莉菜と2人きりでちゃんと話がしたかったから、咄嗟にこんな行動に出てしまっただけだ。
「あのさ莉菜、さっきの話の続きなんだけど……」
宮本さん達には聞こえないぐらいの声で彼女の耳元に口を寄せると。
「ちょっと類、少し黙ってて」
「……」
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