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莉菜の声だけ聞こえてこないとは思ったけど、まさか寝てるとは思わなかった。
青木さんが散々得意げに語っていた恋愛論を莉菜は少しも聞いていなかったんだと思うと、少しだけ笑えた。
でもついさっきまでは、起きていたはずなのに。
「もう、莉菜さんっ!起きて下さいよ~夜はこれからですよっ」
亜美ちゃんが莉菜の体を揺さぶると、莉菜はぼんやりした表情でうっすらと目を開けた。
「……ごめん、寝ちゃってた?私。何か急に睡魔に襲われちゃって……」
「疲れたんじゃないですか?お風呂も入ったしエステもしたし。莉菜さん、向こうの部屋で寝ますか?私も明日仕事だからもう寝るんで」
そう言って青木さんは莉菜の体を支えて立ち上がった。
「……うん、ちょっと早いけどもう寝ようかな。とにかく眠くて……」
莉菜は目をこすりながら、何とか喋っている状態。
立ったままでも寝れるんじゃないかっていうぐらい、眠気に襲われているようだった。
当然莉菜と青木さんを2人きりにする事なんか出来ず、俺はまだこれから飲もうとしている亜美ちゃんに声をかけた。
「亜美ちゃんも、部屋戻ってくれる?莉菜と一緒に」
「えー私まだ飲み足りないんですけど。もう少し飲んでてもいいですかぁ?」
……よくねぇよ。
「いいから、早く戻って。頼むから」
少し強めのトーンで言うと、かなり酔っ払ってる亜美ちゃんはふざけて泣き真似をし始めた。
「椿さん怖いー!怒ったー!」
亜美ちゃんが大袈裟に騒ぐから、傍にいた諸橋さんに気付かれてしまった。
「おい椿!お前亜美ちゃんに何言ったんだよー泣いてんじゃん」
「よく見て下さいよ。彼女、泣き真似してるだけですから」
そう冷静に返したけれど、酔っ払いには通用しないらしく。
諸橋さんと亜美ちゃんはギャーギャーと騒ぎ出した。
俺は軽く舌打ちをして、亜美ちゃんの腕を掴み彼女の耳元でこう囁いた。
「部屋に戻らないなら、宮本さんにバラすよ。片想いしてる事」
その瞬間、騒いでいたはずの亜美ちゃんの声は一瞬で静まり返った。
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