君と密室の中で-2

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確か莉菜は、亜美ちゃんと青木さんと3人でガールズトークが始まった頃はちゃんと起きていたはず。 その前だって、桃の缶酎ハイしかほとんど飲まずに、明日は仕事だからと言って飲む量もしっかり自分でセーブしていた。 だから酔ってはいなかった。 絶対に。 それなのに、あんなに急に眠くなったりするだろうか。 「どうした?椿」 そのとき宮本さんが立ち上がり、「何かあったのか」と言いながら、テーブルの上に散らかっている空いたグラスや空き缶を片付け始めた。 「……そのグラス……」 「グラス?これがどうかした?」 宮本さんが片手で持ち上げた、空のグラス。 グラスの底には少しだけ、濃い赤紫の液体が残っていた。 そういえばあのとき。 青木さんは、莉菜と亜美ちゃんに自分が作ったカシスオレンジを手渡した。 そして莉菜はそれを飲んだ後に、突然急激な眠気に襲われたんだとしたら。 莉菜が飲んだ酒にだけ、彼女が何か入れていたとしたら。 「ちょっと隣行ってきます」 「え?今から?」 わざわざ眠らせるためだけに、そんな事をする必要はない。 もしこの想像が当たっていたとしたら、他に何か企みがあるはずだ。
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