敵意の先にある想い

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許せなかった。 別に、自分が危険な目に遭わされたからではない。 その事に関しては、彼女の事を警戒していたくせに彼女が作ったお酒を口にしてしまった自分にも非があると認めているから。 自分の甘さが招いた事でもあると思っている。 実際、自分はあのとき意識が朦朧としていたからハッキリとは思い出せないけれど、類が青ざめた表情で私に駆け寄ってきた一瞬だけは記憶に残っている。 でも許せなかったのは、私自身に対して彼女がやった事ではない。 自分の非を認めずに、亜美ちゃんを言い負かそうとした点。 私の事を必死に捜してくれた、宮本さんや諸橋さんに対して謝罪の言葉がない点。 それから、類に対する彼女の態度。 あいにく私は、この子より少し長く生きてはいるけれど、全てを許してあげれるような器の広さは持ち合わせていなかった。   「ねぇ青木さん。……私が何に怒ってるか、わかる?」 「……」 「とっくに、わかってるよね?」 でも彼女は怪訝な表情をしたまま、口を開こうとはしない。
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