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「……私が助かって、残念だった?」
そう言うと、彼女は一瞬ビクッと体を震わせた。
それは本当に一瞬の動揺だった。
でも間違いなく、私の言葉に彼女は反応していた。
「ねぇ、どうしてあんな事したの?」
「だから、証拠は……」
「証拠なんかなくてもわかるよ。私を見るあなたの目を見れば、そんなの簡単にわかる」
確信を持てなかったから誰にも言わなかったけれど、本当は初めて顔を合わせたときからずっと気になっていた。
彼女の私を見る視線に、敵意のようなものを感じていた。
ホテルに着いてからも、ずっと。
彼女は、私からほとんど視線を逸らさなかった。
類に好意を抱いているから、恋人の私を疎んでいるのかもしれないと最初は思ったけれど、会話を繰り返す中で、もしかしたらそれは違うのかもしれないと思い始めた。
鈍い私の勘なんて、きっとアテにならない。
……でもきっと、私への敵意の理由は、他にある。
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