毎日その笑顔が見れるなら

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ピルルルル…… 呼び出し音がロビーに鳴り響く中、部屋の向こうから一切応答はない。 「……」 あのときの感覚が、肌を伝う。 あの旅行で、莉菜の無事をただひたすら願っていたときの感覚。 1ヶ月が経った今でも、忘れられない恐怖。 前回はギリギリのところで間に合い莉菜を助け出す事が出来たけれど、あんなに都合よく毎回莉菜を助け出せるかと言われれば、ハッキリ出来るとは言えない。 四六時中傍にいたいけど、四六時中傍になんていれない。 もどかしい気持ちが、更に俺を焦らせる。 ピルルルル…… このまま鳴らしたところで、応答はないと判断した俺は、呼び出しボタンを切るためにボタンに指を置いた。 その瞬間、ガタガタッと激しい音が部屋の向こうから聞こえてきた。 そして、その音が聞こえた数秒後。 「痛っ……あれ、類?ごめん今開けるね!」 間違いなく莉菜の声が響き渡り、ロックは解除されてエントランスの自動ドアが開いた。
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