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「伝えてるつもりだけど……」
「まだ足りない」
そう呟きながら、莉菜の少し濡れた髪に触れ、髪の隙間から覗く小さな耳に唇を近付けた。
「今日から、ここに住めばいいのに」
「え?」
彼女に触れた瞬間、つい気持ちが先走ってしまって口から出た言葉。
毎日莉菜の顔が見たい。
毎日寄り添って眠って、「おはよう」を言い合う。
俺がいつも切実に願っている事。
付き合い始めた頃、莉菜に同棲の話をしたとき。
莉菜はやんわりと同棲を断った。
まだ互いの両親には俺達がこういう関係になった事を話していない。
俺はすぐに話してもいいと思っているけど、そこはまだ莉菜が躊躇しているから。
そしてそんな段階で、同棲に踏み込めない事ぐらいわかっている。
……わかってはいるんだけど。
「じゃあ、一緒に住む?」
「え?」
自分から一緒に住みたいとアピールしていたくせに、莉菜の口からそんな言葉が返ってくるなんて少しも思っていなかった俺は、意表を突かれた形になった。
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