138人が本棚に入れています
本棚に追加
結局母が野菜を分けてくれるのを待っていたら、かなり時間が過ぎてしまっていた。
帰るねって言ってから、もう何分経っただろう。
「なぁ姉ちゃん。俺そろそろマジで帰りたいんだけど」
「私だって帰りたいよ。でもお母さんが……」
「ちょっと姉ちゃん、母さんに言ってよ。早くしろって」
「……ねぇお母さん、まだ……」
そのときだった。
家の玄関の鍵がガチャガチャと開く音が聞こえ、その直後に「ただいま」と父の声が聞こえてきた。
「あ、父さん帰ってきた」
いち早く豪が父の声に反応し、玄関まで出迎えに行った。
玄関からは父と豪の話し声がリビングまで聞こえてくる。
そしてリビングに現れた父は、私の顔を見るなり少し嬉しそうに微笑んだ。
「お帰り、莉菜」
「あ……ただいま」
私と豪が帰ってきて嬉しいのか、何となくいつもよりも父の雰囲気が優しい気がした。
最初のコメントを投稿しよう!