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「ちょっ……お母さん!」
私は慌てて母の後を追ったけれど、遅かった。
私が足を踏み出した瞬間に、母は次の言葉を口にしていた。
「莉菜にも、ようやく新しい恋人が出来たのよ。しかも今度はね、凄く一途で莉菜と結婚したいってずっと想い続けてくれてた子なの」
「へぇ……どんな人なんだ?莉菜」
父の興味津々な視線が私に向けられる。
ついでに、私の恋人が類だという事を既に知っている豪と母の視線も。
豪は目と手のダブルジェスチャーで、『早く言え』と指示を送ってくる始末。
「……えっと、あのね、実は……」
「じれったいわね。そんなに言いづらいなら私が代わりに言ってあげるわ。あのねお父さん、莉菜の恋人、類くんなんですって」
その瞬間。
父は勢いよくソファーから立ち上がり、先程とは全く違う視線を私に向けた。
その瞳には、抑えきれない程の怒りが込み上げていた。
こんなに険しい父の表情は、今まで見た事がなかった。
一気に空気が張り詰めていくのを、肌で感じてしまう程だった。
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