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「お父さんったら……どうしちゃったのかしらあんなに怒って。珍しいわね」
母はさほど気にした様子は見せずに、取り分けてくれた野菜の説明をし始めた。
「このトマトね、お向かいの安田さんがおすそ分けしてくれたものなんだけど、凄くみずみずしくて美味しいのよ。それから、こっちのピーマンは……」
「ねぇお母さん。本当に知らないの?お父さんがあんなに類との交際を反対する理由」
「知らないわよ。てっきり賛成すると思ってたくらいだし。類くん、お父さんを怒らせるような事何かしたのかしらね?」
「……」
空気を読まずに思った事を何でも口にしてしまう豪なら、知らないところで嫌われるのもわかる。
でも、類が父に嫌われるような事をしでかすなんて、到底考えられなかった。
「もう……今日はちゃんと説得するつもりで来たのに……」
1番望んでいなかった、最悪な展開になってしまった。
父は家を出て行ってしまったから、今日この後話し合う事は不可能だ。
父が出て行ったときにすぐに追いかけていればもっといろいろ深く追及出来たのかもしれないけれど、あのときはどうしても足が動かなかった。
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