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「じゃあ母さん、俺らそろそろ帰るわ」
よし。
でかしたぞ、弟よ。
こういうとき、豪は割と空気を読まずに思った事を口にしてくれるから助かる。
豪が空気を読まないせいで、今まで何度かピンチな場面に遭遇した事はあったけれど、今回だけはグッジョブ。
「あら、もう帰っちゃうの?お父さん帰ってくるまでいればいいのに」
豪に先陣を切ってもらったら、後は簡単。
私はいかにも申し訳なさそうに言葉を繋げた。
「ごめんね。本当はもうちょっといたいんだけど、あんまり長居したら帰り遅くなるから。明日の仕事の準備もあるし」
「本当、薄情な子達ね。あ、ちょっと待って。帰るならこれ持って行きなさい」
そう言って母は冷蔵庫からいくつかのタッパーを取り出した。
中には、私と豪の好物のおかずや惣菜がギッシリと詰められていた。
「え、お母さん……これ全部、わざわざ作ってくれたの?」
「どうせ2人とも、家でまともな食事食べてないんでしょ」
母の言う通りだった。
豪はまだ愛ちゃんがたまにご飯作ってくれるからいいけど、私は夜はほぼコンビニかスーパーのお弁当。
自炊する余裕なんて、ほとんどない。
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