何度でも君に恋をする

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「……あの、賢、それって…」 するとそのタイミングで何故か賢は手を上げ、近付いてきたタクシーを呼び止めた。 「どうする?向こうに行けば類に偶然遭遇する可能性もなくなるだろうし、自然と忘れられると思うけど」 「……」 賢が呼び止めたタクシーが、スピードを緩めてゆっくりと私達の方へと近付いてきた。 その様子を見つめながら、私は賢の誘いへの答えを頭の中で考えていた。 確かに東京から離れれば、類と遭遇する場面は格段に減らす事が出来る。 実際今、別れてからも毎日、どこかで類に会えるんじゃないかって無意識に類を探すクセがついてしまっている自分がいた。 そういう意味でも類がいない土地へ行けば、その滑稽なクセもなくなって、次第に類の事を忘れていく自分に出会えるかもしれない。 でも、私は類を忘れたいわけじゃない。 類との、決して長くはなかったけれど濃密だったあの日々を、これからも忘れたくはない。 結果的に類から逃げてしまった私だけど、眩し過ぎたあの恋からは、逃げたくはなかった。
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