何度でも君に恋をする

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「……行かない。私はここで頑張るって決めたから」     「だと思った」 「え……」 賢は苦笑しながら呼び止めたタクシーへと乗り込んだ。 そして発車する前に、私の目を真っ直ぐ見つめて言った。 「ほっとしたよ。相変わらず、要領が悪くて」 「な……!」 「簡単に生きていく方法なんていくらでもあるのにさ、結局お前は苦しい道を選ぶんだよな」 要領は確かに良くはないかもしれない。 だけど、進むべき道はいつだって自分で決めてきた。 だって自分の人生だから。 他に、責任を取ってくれる人なんていないから。 他人が作ってくれた逃げ道に逃げ込んでしまえれば、楽なのかもしれない。 それはそれで、幸せに生きていけるのかもしれない。 でも、そういう生き方に自分が向いていない事は、自分が一番よくわかっていた。 そして、賢も。 きっと、わかってくれているんだと思う。 「でも俺は、お前のそういうとこ、良いと思うよ」 「……」 「じゃ、またな。向こう行って万が一寂しくなったら連絡するわ」 「……賢なら、どこでもうまくやっていけるから大丈夫だよ」 そうアドバイスを送ると、賢は笑って「安定のテキトー加減」と嫌みを最後に口にして、賢を乗せたタクシーはゆっくりと私の目の前から去って行った。
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