第29話 何度でも君に恋をする

何度でも君に恋をする

私は父を露骨に避けるようになった。
あの事実を知った日に父と電話で言葉を交わしてから、父とは連絡を取っていない。

むしろ、声も聞きたくないし、顔も見たくない。
過去の父がどういう気持ちで類の母親とそういう関係になったのかなんて、もう、知りたくもなかった。

何か事情があったのかもしれない。
だとしても、私がそこに同情する事はない。

裏切られた感覚と、類との別れを決断させる原因を作った父を恨む気持ちが、ずっと心の中にまとわりついて離れずにいた。

母はきっと今も何も知らないままなんだろう。
豪にも、私の口からはあの事実を伝えてはいない。

今さらその事実を母に打ち明ける事が正しいのか正しくないのかなんて、私にはわからなかった。

だけど、真実ばかりが人を救うわけじゃない。

……知らずにいた方が幸せな事って、きっと沢山ある。

私がもし母の立場だったとしたら……知らない方が良かった、と思うに違いない。