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類は相当母親を厳しく糾弾したらしい。
その詳細までは深く聞かなかったけれど、きっと類も、私と私の父のように……もう今までのような親子関係には戻れないのかもしれない。
だけどそれほどまでの確執を生んでしまうような事実を知ってしまったわけだから。
それは、もう仕方ない事なのかもしれない。
「莉菜はあれから一度も実家には帰ってないの?」
「あ……うん。……お父さんとも、ちゃんと一度話はしないとって思ってはいるんだけど……まだやっぱり、会いたくなくて」
もう、心が会うのを拒絶してしまっていた。
父が母を裏切った事実。
私達の恋を妨げる原因を作った事実。
どうしても、冷静になる事なんて出来そうになかった。
「いや、それはそれで仕方ない事だと思うよ。莉菜はまだ気持ちが落ち着くまでは会わなくていいと思う」
そう言って類は、私を気遣うように優しく頭を撫でてくれた。
「だから、莉菜の代わりに俺が会って話して来たから」
「……え?」
「あのさ。俺があのまま素直に黙って莉菜の事諦めるなんて、まさか本気で思ってた?」
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