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エントランスには、ピルルルル……と機械的な呼び出し音だけが鳴り響く。
「……」
1回、2回、3回……
結局7回目くらい鳴らしたところで、呼び出しボタンを再度押して呼び出すのを止めた。
類は、応答しなかった。
こんな夜中だけど、何故か半分以上の確率で応答してくれると勝手に思い込んでいた私の落胆は凄まじかった。
家にいないんだろうか。
それとも、もう寝てしまってインターフォンの呼び出しに気付いていないとか。
それとも、インターフォンのモニターで私の顔を確認して、敢えて応答しなかったか。
いくつもの選択肢を瞬時に頭の中で並べ、どれが正解なのかなんて意味のない事を考える。
私はエントランスを飛び出し、車通りの多い道路まで出てすぐにタクシーを呼び止めた。
幸い空車のタクシーが多く、すぐにタクシーは捕まった。
車に乗り込み自宅の住所を伝えて、はぁ……と息を吐く。
何を考えたって、もう意味はない。
類には、会えなかった。
突発的な行動ではあったけど、これが私達の恋の結末なんだと感じた。
……あのとき類から逃げてしまった自分は、一生後悔しながら生きていくしかないんだ。
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