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自分で決めた道。
自分が決めた未来。
なのに、今更後悔して泣こうとするなんて、私は狡い。
「……っ」
必死で涙を堪えた。
美月の前でも賢の前でも泣かなかったんだから、ここで泣きたくはない。
せめて、家に帰るまでは我慢しよう。
家にはもう居候の豪もいない。
誰の目も気にする事なく、泣くんだ。
涙が枯れ果てるくらい泣いて、そして新しいスタートを切るんだ。
どんなに眩しくても、もうあの日々には戻れない。
戻れないなら、進むしかない。
一生立ち止まってるわけにはいかない。
類のマンションから私の自宅マンションまでタクシーは静かに走り続け、タクシーから降りたときにはほとんど抜け殻状態の自分がいた。
必要以上にヒールの音を鳴らし、急いでエントランスのオートロックを抜けてエレベーターで上へと駆け上がる。
……そして、自宅の扉を開けた瞬間。
それまで堪えていた涙が一気にブワッと溢れ出し、声にならない声と共に激しく零れ落ちていった。
真っ暗な玄関でしゃがみ込み、ひたすら涙を流す。
無力な自分を、悔やみながら。
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