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目の前の光景が信じられず、私は何度も瞬きを繰り返した。
けど、瞬きを繰り返す度に、これは夢なんかじゃないんだって脳が理解していくのがわかった。
そして徐々に類は私の方へと近付き、パチンと玄関の明かりが点いたかと思ったその瞬間、しゃがみ込んで私の顔を覗き込む類がいた。
「……お帰り、莉菜」
「……」
類の華奢な指先が、涙で濡れた頬にくっついた私の髪に優しく触れた。
「……っ」
ただ、それだけの事で敏感に反応してしまう自分がいた。
「な……なん、で類がここに……」
「何でって、俺がここに来た理由なんて一つしかないでしょ」
そして類は、触れた私の髪を一筋掬い、その髪に唇を重ねた。
類の綺麗な瞳には、泣きじゃくる自分の姿だけが鮮明に映っていた。
「莉菜に会いたかったから、来たんだよ」
会いたかったから、来た。
凄く純粋で、そして唯一、どうしようもなく欲しかった答えだった。
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