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「……」
「言って」
「……美月と……賢」
賢の名前を口にした瞬間、類のキスはピタリと止まった。
わかってる。
類からしたら、そんなの聞きたくない事ぐらい。
でも、嘘はつきたくなかった。
嘘は、つけなかった。
「……まさか俺と会ってない間に、友情が復活したの?」
「復活したっていうか……賢に会ったのは本当に今日が久し振りで、本当は美月と2人で飲むんだと思ってたんだけど、美月が落ち込んでる私を見かねて賢を呼んでくれて……」
あぁ、何かもう全てが言い訳に聞こえる。
これじゃあ、逆に怪しまれてしまう。
本当に、賢との間には何もないのに。
「……莉菜、落ち込んでたんだ」
そこで類は私から体を離した。
だけどその表情は、今まで見てきたどんな表情よりも柔らかく、穏やかで……少しも類から目を離せない自分がいた。
「……落ち込んでたよ。私から別れるって言ったけど、でもやっぱり類の事、どうしても忘れられなくて……」
「忘れられたら困るんだけど。……俺は莉菜を忘れた日なんて1日もなかったよ。あの日から毎日、莉菜の事ばかり考えてた」
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