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私だって、そうだった。
別れようと告げたあの日から今日まで、類の事を考えない日なんてなかった。
頭の片隅に、心の片隅に追いやったはずだったのに。
結局、徐々に中心へと広がっていった。
気付いたときには、別れる前よりも、類は私の中で確かな存在になっていた。
「……私もずっと、類の事考えてた。今、類は何してるんだろうって、類はもう新しい恋をしてるのかなって、本当は豪とか亜美ちゃんに聞きたかったけど、怖くて聞けなくて……」
「今日の莉菜、凄い素直だね」
「……からかわないでよ」
「ごめん、つい。嬉しくて」
ほら、そうやって、本当に嬉しそうに笑うから。
私の大好きな笑顔を見せてくれるから。
……文句の一つも言えなくなるじゃない。
「俺の近況がそんなに気になってたなら、豪に聞けば一発でわかったのに」
「だから……怖くて聞けなかったんだってば」
「俺は定期的に豪から莉菜の近況聞いてたけどね。まぁ当然、莉菜が俺を忘れられないのはわかってたけど。でもその間にいろいろやらなきゃいけない事があったから」
そこで類の笑みがスッと消え、真剣な表情へと切り替わった。
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