エピローグ

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同棲の事を母に伝えてから、一度だけ父から私の携帯に着信があった。 仕事を終えて帰宅する間にかかってきた電話で、出ようと思えば出れた。 ……でもどうしても、通話ボタンを押す気にはなれなかった。 このままじゃいけない。 ずっとこうやって避け続けられるわけがない。 いつかは話さなきゃいけない。 何度も何度も、わかりきっている事が頭の中を巡っては消え、また巡る。 「まぁ、椿のお父さんが類くんのお母さんと不倫した事実は変わらないわけだけどさ。……後悔はしてるんじゃない?」 「……うん」 「悪い事だってわかってても、気持ちが動く事ってあるんじゃない?だからって許せる事かって言われたら話は別だけど」 「……そうだね」 「とりあえずさ。お父さんの話だけでも、聞いてあげたら?」 「……」 うん、とは言えなくて、笑って誤魔化す事で精一杯だった。 父が私に言いたい事なんて、聞かなくても大体わかる。 不倫して家族を裏切った事を、謝りたいんだと思う。 謝って、楽になりたいんだ。 許してあげるよって、そう言われたいんだ。 ……きっとそれだけってわかってるから、避けてしまうんだ。
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